59:「きっかけ」  6月9日   PM9:00


レゾリュートにある一軒だけの店 COAP へ煙草を買いに行った。その中にある郵便局に行くと私宛の荷物が届いていた。かなりの重さがあったが、その重さは嬉しさに比例して苦にはならなかった。ワクワクしながら担いできた。私が頼んだ物以外にもいろいろ入っていそうな感じだ。

部屋に戻り荷物を開けると、タバコ・ビデオ・雑誌・新聞・小説(竜馬が行く)等が入っていてうれしくなった。その外に日本で毎週読んでいた漫画の本まで入っている。私の会社(東北機工)の事務員 志賀さん、古川君の心遣いが感じられる。日本の香りのするものばかりだ。

夕食後、テリーさん・ジョイさんと私の3人で日本から送ってもらったビデオを見た。映像記録社制作の「いわきを見る」の中から、満開−いわきの桜−と海辺の暮らし−九面港の早春−を見た。せりふがなく映像と音楽だけのビデオだったが、ジーンときた。見終わって私がため息をつくとジョイさんに「ホームシックになったんじゃない」とからかわれた。そうかもしれない。そこには日本のいわきの自然と人々の日常生活があった。「大場さんが北極から戻ってきたら見せてあげたい」と私が言うと、テリーさんがうなずいていた。

その後、私が大場さんを支援するきっかけとなった「わが夢は北極海横断」のビデオを見た。ビデオの最初の方にはニュースでも流れたいわきでのそりを海に浮かべた実験の様子もダビングされていた。3人で真剣に見てしまった。しばらくぶりで大場さんを見たテリーさんは感激していた。

途中で大場さんの着ていたTシャツを見て、「あれここのTシャツだよ」とテリーさんが説明してくれた。顔を見ると涙を流していたようだった。2年前に亡くなった北極の父と呼ばれた旦那さんを思い出したに違いない。私も初めて大場さんを知った時の気持ちが湧き上がってきて、鼻の奥がツンとした。あと残り250kmを歩けば長かった大場さんの旅が終わる。無事に終えたい。確実にサポートしたい。私は決意を新たにした。

60:「無線交信」  6月9日   PM10:30


大場さんからのアルゴスメッセージ(交信したい)は出ていないが、ガレージ2階の無線機で大場さんに呼びかける。

   「大場エクスペデッション 大場エクスペデッション
    大場さん聞こえますか」

すぐに大場さんの声が入る。

「聞こえます 志賀さんこちらの声はきこえますか?」

雑音の中から大場さんの声が浮かびあがる。間違いなく大場さんの声だ。ほとんど聞き取れないので、こちらより一方的に次のことを伝えた。

1 次回の補給が必要な場合に備え、食料・燃料は2週間分以上用意している。

2 朝と晩用のペミカンは、ポーラーフリーからもらった事。

3 昼用ペミカンは明日蓮見さんから送られてくる予定になっている。

4 テリーさんのところでは無線の交信状態が良くない。天候がよいと特には
  入りが悪いので、次回交信は
612日午後9時にファーストエアー社で待機する。

5 大場さんが交信を必要とする場合、朝のアルゴスメッセージで合図をして
  ほしい。

6 前回の補給時、飛行機からのルートチェックは、雲があったため、あまり
  良く確認できなかった。一部見えたところは、リードに薄氷が張っていた。

7 アルゴス・新アルゴス共にデータが取れているので、安心してほしい。

以上のことを伝えた。1つごとに確認をとったところ、大場さんからは「ラジャー・ラジャー」と返事があった。一部雑音がひどく聞き取れないところがあった。

現在ファックスのリボンが切れたため、ファックスの受信がテリーさんの回線に入っている。夜はもらえないので少し不安だ。明日CRVに電話をして、いつレゾリュートにリボンが着くかを確認しよう。

             レゾリュートベースキャンプ  志賀