−日本の常識が通用しない−

私は中国工場設立以来中国で生活をして4年になります。
初めて中国を訪れた時、
経験したことのない異文化に接し、考え方や生活様式・社会慣行の相異に強い違和感を受け、特に日本の常識が通用しない事に、ひどく抵抗がありました。

設立当時私はFRPの成形指導員をやっておりました。作業者にここの床が汚れているので磨いて欲しいと指示すると彼らは、床が綺麗になる、ならないにかかわらず、一日中床を磨いている。又、製品の表面に傷があるので研磨して傷を無くして欲しいと言うと、その部分を朝から晩まで研磨し、最後には製品表面のコーティングを剥げさせてしまいました。作業を指摘すると、返ってくる言葉は必ず「言い訳」で自分の非を決して認めません。しかもその言い訳はあまりにも理屈に合わないのです。


−中国人は怠け者?−

私はこれが中国人なのか。なんて怠け者なのだろうと感じ、彼らに「いったい何を考えているのだ?」「これだから中国人は・・・」「日本人を見習え」「日本人のように生活が豊かになりたいのなら言う事を聞け」と言う言葉を言っていました。言葉が通じない事もあり、中国人が私を馬鹿にしているのではないか?とさえ思っていました。私は日本の考え方が国際標準である。自分の考えが当然であると考えていました。

会社設立から1年ぐらい経った時の事でしょうか。工具の破損が多発し、班長に工具を使用する前後に油をさすよう命じました。しかし工具の破損は一向に減りません。おかしいと思い作業者の作業を見ていますと油差しをやっていません。私は班長に「なぜ彼らが油を指さないか」と問いました。彼らにはちゃんと指示したと言います。作業者に聞いてみると確かに指示されたと言います。ではなぜ油を差さないのかと聞くと、作業者は「油のさし方が分からない」と答えるのです。


−中国では仕事ができない!!

私は、なぜ出来ないと言わないのか?出来ない事をなぜ伝えないのか?この班長と作業者を怒鳴りつけ、もう私は中国では仕事が出来ないと考え、役員の志賀さんに相談しました。志賀さんは、「ニュースキャスターの話」をし、ニュースキャスターがテレビで言った事が視聴者には間違った内容に捉えられたらしく、苦情が来た。これは誰が悪いのでしょうか?視聴者ですか?ニュースキャスターですか?それとも両方ですか?と言う内容でした。

私は両方じゃないかと言うと志賀さんは、この不具合は全てニュースキャスターに責任があるというのです。その訳は、もしニュースキャスターが話さなければ、間違った捕らえ方を視聴者にされなかったからだと言うのです。ニュースキャスターが私なら、視聴者は作業者と言う事になるのだろうか・・・・。

そう考えてみると、だんだん自分の指示の仕方にミスがあったのではないかと考えられたのです。私は日本で当たり前のことが中国でも出来ると勘違いしているのではないか?私は考えを改め、もう一度班長に対して教えて見ることにしました。

−出来るように教える−

まず「なぜ油を注すか?」を教え、そして「何処にどのように差すか?」を教えました。さらに作業を自分で行い、見て分からせました。最後に確実に作業者が出来ているか確認もしたのです。班長が出来ました。次に班長が作業者に教える所も確認しました。彼らは言われた事を完璧に出来るようになりました。彼らは出来ないのではなく、出来るような教えを受けていなかったのです。あの床磨きや製品の研磨も私の指示が十分でなかったからだ・・。私はこれまでに、間違った指導の仕方で作業者につらい思いをさせてしまったことを反省しました。「日本では誰でも出来る・・・」と言う固定観念を捨て、「油差し」を基本に作業者に間違いを起こさせない教え方をしようと考えが変わりました。

−様々な夢−

そして相手の気持ちが分かってくると、彼らが非常に具体的な夢を抱いている事に気付きました。ある者は、お金を貯めて本屋を開きたい。又ある者は会社を設立し、そこの社長になる。洗濯機が欲しいので給料をあと300元高くしたい。お金がなく大学にいけなかったのでお金を貯めて大学に行きたい。日本語を憶えたい。等々様々な夢を抱いています。

そこで今年2002年の会社の目標を以下のようにしました。
「珠海一給料を払える会社にしたい」です。まだ設立して間もない会社ではあります。この目標は大変ですが、私を含む従業員のがんばりで達成したいと考えています。そして、私の目標が皆の夢達成の手助けになると信じ、がんばっていこうと思います。